「素晴らしい、素晴らしい舞である。なかなか男でも舞えまい。どうじゃ、褒美をやりたいが」
沈黙の中、金村、勇気を出して立ち上がり前へ出る。
「私、大和豪族を代表して、手白香姫に随行してまいりました。お願いがあります」
「待て」大王オホトが遮った。
「手白香姫に褒美をくれるのじゃ、お前の言い分は明日、聞くだけ聞いてみようか」
「越のナカから送られてくる玉があれば、越のシリからは金がある」
大王は、着の身着のまま大和から来た姫を気遣う声を妃から聞き及んでいた。打って変わった優しい声に、手白香姫思わず息をのむ。目子妃が手白香姫に駆け寄った。
「今後、私の宮で一緒に、お世話させてくださいませ」と、母親のように肩を抱きかかえて「私には娘がおりません、どうかお願いいたします」
金村は崖っぷちに立たされた。――違う、王子の妃にしてもらっては駄目なんだ。大王の妃でないと、格が違うだろう、格が――
見かねた宰相孫氏が立ち上がり前に出てきた。
「お待ちください」息長氏から話を聞いていた孫氏、一言挟んだ。
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