その後どうなったかは分かりませんでしたが、同じ志で学生運動をしている者同士、どうして争わなくてはならないのだろうと、悲しい気持ちになりました。
大学に入るためにせっせと予備校に通っている私たち浪人生と、せっかく希望の大学に入学したのに、学生運動に明け暮れている大学生と、入学した途端、遊んでばかりいるノンポリ(ポリシーがない)学生とが混在していて、何が平和なのか幸せなのか、分からない時代でした。
そんなある日、姉と私にとって衝撃的な事件が起きました。夜、アパートで寝ていると、ガリガリ、ガリガリという金属音で目が覚め、「何だろう……?」と思って電気を点けてみると、なんと、大きなムカデが、テーブルに置いてあったポットの上をグルグル回っていたのです!
「キャー!」と心の中で叫び、恐怖で身動きできない姉と私。和島村時代に一度だけ父と母がムカデを退治している姿を見ましたが、直江津では家の土台が高かったせいか、ムカデが家に入ってくることはありませんでした。
アパートのすぐ裏が竹林だったために侵入してきたのかも知れません。姉と私は順番にムカデの見張りをして、朝になったら大家さんに頼んで退治してもらうことにしました。
ようやく朝になり大家さんを呼んでくると、ポットの上にいたはずのムカデがいつの間にかいなくなっていたのです。
それからは寝ていても生きた心地がせず、おまけに蟻まで砂糖の容器に入り込み、場所を替えてもすぐ見つけられ、蟻との闘いも始まりました。
ムカデや蟻にしてみれば、突然自分たちの縄張りに家が建ち迷惑だったのかも知れませんが、私と姉にとっては一大事。大家さんには申し訳なかったのですが、母に相談してアパートを出ることにしました。
夏になり、母と一緒に東京・板橋にある親戚の島田家を訪ねました。島田家は遠い親戚(母の実家のお嫁さんの叔母さん)でしたが、事情を話すと受験までの半年間、私を預かってくれることになりました。姉は神奈川にいる従兄の家に、しばらくお世話になるとのことでした。
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