「も~う、亜紀ってばノリが悪いよ~。今夜は彼氏の事なんて忘れて楽しも?」
「……彼の話を振ってきたのはそっちでしょ?」
「そうだっけ? あはは~」
チラリと鞄の中のスマホに目をやる。何の連絡も寄越さない俊雄さん、今何処で何をしているのかさえ分からない。こんな事、付き合い始めてから初めてだ。
私はビールジョッキを持ち、グッと半分くらい飲み干した。
「良い飲みっぷりだね」
「正幸さん、私の方が良い飲みっぷりですぅ」
そう言うや、真由は二杯目のビールを一気に飲み干す。
「う~ん、美味しい!」
「真由っ、一気飲みは駄目だってば。時間だってまだあるんだから、ゆっくり飲みなよ」
「だってぇ、亜紀に負けたくないもん。正幸さん、私を見て! 三杯目いくよ~」
「おお、良いねぇ。その勢いはまるで、アレの時の激しさと一緒だな」
「んもう、恥ずかしい事言わないでよぉ。そんな事言われたら……正幸さんが欲しくなっちゃう……」
「はは、可愛い事言うじゃないか」
この二人は、何のやり取りをしているんだろう……。今日はお店の誕生のお祝い会のはず。それが真由と長澤さんの会話で、一気にピンク色の雰囲気を作り出されてしまった。
「お二人とも、プライベートな事は後にして下さい。今は祝杯の席だから、ちゃんとお祝いしましょうよ」
「流石真面目な亜紀ちゃん。そういうトコ好きだなぁ」
「は?」
意外な言葉に固まってしまう。隣の真由は私をジトッと見て、今にも文句を言ってきそうな感じだ。
「長澤さん、ふざけ過ぎで――」
「正幸さんは私のモノだから!」