【前回の記事を読む】100年後、日本の国土の中で、日本人として、存在する余地があるか―「真に心もとなく、非常に「脆弱」な存在だと見ている」

日本人のとりあえずの幸せ

お昼時、隅田川の左岸、浅草の近くでお蕎麦屋さんに寄ろうと何人かで店に向かった。以前、その店で大分待たされた事もあって、開店前に行こうと目論んだ。

角を曲がって、店に着くと、既に列が大分伸びていた。最後尾と思われる場所に並んだが、少し後になって、そこが列の先頭であった事に気が付いて、すぐ最後尾に並びなおした。驚いた事に、その間、誰一人として異議を唱える人が居なかった事だ。

もしこれが、他の国で起きた事だったら、一悶着も、二悶着も起こった事だろう。これは些細な事だが、日本人の特質を良く表した事例ではないだろうか。

2024年1月、羽田で航空機事故が起こった。札幌から羽田に飛んだ日本航空機と海上保安庁の飛行機が夕方、滑走路上で衝突した。

テレビでは中継が行われていた。みるみる炎が広がって飛行機が燃え上がるのを目撃する事になった。見ていて気になったのは、乗員・乗客の事だ。

後で分かった事だが、乗員・乗客379名は全員避難し、無事だった。衝突や機内からの避難も含めて一歩間違えば大惨事であった。

事故の経緯と原因究明、再発防止が求められるが、注目すべきは、乗員乗客が全員、殆ど無傷で避難出来た事だろう。海外のメディアでは「奇跡」という言葉が使われていた。

これは、日本航空の「御巣鷹山」の事故から学んだ教訓や不断の訓練の賜物であった。機外では炎が上がり、左右に8つある脱出装置の全てが使える訳ではない。