「お酒、ないほうがほんとはいいんだ。あんたがあとから考えたときに、ちゃんとした印象が残っててほしいからさ。でもまあ、お酒があっても、あたしの話は変わらないから、どうしても飲みたいなら少しくらいいいけど」
「ちゃんとした印象、って?」
「それをこれから話すの」
「重大なことなの?」
「重大問題よ」
「理緒子にとって? それとも、あたしに関係あるの?」
「あるのよ。ほら、彼氏が来た。話してきなさい。とにかく早くして。すっかりお尻がしびれちゃったわ。それからあれはもうたくさん! 音楽と一緒に、変な英語の号令。何なのさ、あれは」
ええーっ、なんでぇ、どうしてぇ、と山川はだだをこねたが、ものの一分も言い聞かせると、あきらめておとなしくなった。
「理緒子さんは何の話があるって言うんだろう。また今度にしてもらうわけにいかないのかなぁ。せっかく〝休み〟のニューイヤー・パーティーだっていうのになぁ」
更衣室に入る前に越前とすれ違った。次の夜の部のトップバッターとして自分が行うワークショップのために慌ただしくしているものの、目を合わせようとこちらを見たのがわかった。
だが、あさみはまっすぐ前を向いて気づかない振りをした。越前は一瞬立ち止まったが、時間がなかったのだろう、急いでホールへ入っていった。
次回更新は8月12日(火)、22時の予定です。
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