【前回記事を読む】「甘えている」「気持ちが弱い」学校に行けないのは本当に"心"の問題? 根本の体の問題を解決し、元気な姿を取り戻そう!

序章 不登校の実態 

2023年度に文部科学省の委託を受け、公益社団法人「子どもの発達科学研究所」が不登校要因の調査を実施しました。これについて、「文部科学省委託事業 不登校の要因分析に関する調査研究 報告書」が作成されています。

この調査では、不登校の関連要因(特にリスクを高める要因)について、不登校児童本人の回答がまとめられています。

毎年行われている文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」が、教師からの回答をもとにした結果であるのに対し、この「不登校の要因分析に関する調査研究」は不登校児童本人からの回答も含まれているため、今までの調査と比べ、より実態に近いものになっているのではないでしょうか。

ここでは、不登校の児童生徒に「あなたが最初に学校に行きづらい、休みたいと感じ始めた時、学校や家で、次のような時に、つらいと感じたことはありましたか」と質問しています。これに対し不登校児童生徒の約7割が「体調不良」「不安・抑うつ」「居眠り、朝起きられない、夜眠れない」といった心身不調・生活リズム不調があったと回答しています〔図1〕。

また、不登校のきっかけ要因について、不登校児童と登校している児童の比較もされています。不登校の児童生徒と不登校ではない児童生徒の回答の違い(オッズ比)でもっとも多かったきっかけ要因は「入学、進級、転校など」です。新しい環境が苦手ということでしょうか。次に多い要因は「体の不調」「朝起きられない、夜眠れない」といった症状です〔図2〕。

「学校の決まりのこと(制服・給食・行事等)」は4番目に多い要因です。制服のワイシャツの襟が苦手、スカートのウエストラインが当たると痛い、制服の生地が腿裏にチクチク刺さるような感触で耐え難い、給食の食べ物に苦手な食感のものが多い、運動会のかけっこのスタート時の鉄砲の音や放送から流れる音が大音響のように感じられ、耳が痛くて行事に出たくても出られない、などと感じているお子さんも結構いらっしゃいます。

なぜお子さんはこの調査結果のような症状に苦しんでしまうのでしょうか?

日常生活の中の何気ないことに対する体の反応(体の仕組みが影響して起こる反応)や、生活習慣・環境物質による影響が、知らず知らずにお子さんを苦しめている場合が少なくないのです。

先述した通り、この本では、機能性医学的な要因での体の不調やメンタルの症状を起こす事例と家庭でできる対策について紹介していきます。調査結果で多くみられた「体調不良」「不安・抑うつ」「居眠り、朝起きられない、夜眠れない」「気持ちの落ち込み・いらいら」「新しい環境が苦手」は、体内の機能異常、システム(体の仕組み)の問題でも起こります。不調の原因が体の中にあるなら、それに合った対策が必要です。

第一章からはさまざまな例を挙げながら、具体的な対策を説明していきます。