「おかしいとかそういう事じゃなくて、真由は飲み過ぎだって言いたいの」

さり気なく、話の論点をすり替える。これ以上変な話で盛り上がろうとする真由を止めるためだ。

「……私、ちょっとトイレ」

真由が席を立ち、足元がおぼつかないまま化粧室へと向かう。

今の内にタクシーを呼んだ方が良いかな。

そう思ってスマホでタクシー会社を探していると、ポンッと肩を叩かれた。

「真由、もう戻って……あ、長澤さん!?」

驚いて心臓がバクバクする。

「こんばんは、亜紀ちゃん」

そう言って、隣の席に座る長澤さん。

「ど、どうしてここにいるんですか?」

「ん? 真由にこのくらいの時間に来るように言われてね。あはは、アッシー扱いかな」

「真由なら今、化粧室に行っています。かなり酔っていますから、家まで送ってあげて下さい」

「亜紀ちゃんも酔ってるよね? 頬が赤くてセクシーだよ。前々からさ、俺……亜紀ちゃんの事――」

次回更新は8月10日(日)、19時の予定です。

 

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