そこで私はある時思いついたのだ。代わりに恋をしてもらおうと。ソウルメイトに今度は恋を託してみようと思ったのだ。
昔過食症で悩んでいた時、何かの本で読んだことがある。自分が太りたくないからと、自分が食べたいものを全て小さな子どもに食べさせる母親がいると。
当時はなんて身勝手なことをするんだと憤りを感じたものだが、なんだか今それを思い出して、恋で模倣したくなってしまったのだ。
米ちゃんは適任だ。何人もことセとからセの相手がいて、カジュアルな恋は米ちゃんのいわば十八番。
「最近また好きな人ができたの。米ちゃん、抱かれてきてくれない?」
「よっしゃ。今度の案件はどういう系ですか? 年下? 年上? インテリ? 型破り系?」
「年下」
私は彼の顔を思い浮かべながら、答える。それだけで今この瞬間、確かに私は生きている。自分のことを瑞々しいと思った。
「いくつくらい下ですか? 何してる人ですか? まさか学生じゃないですよね?」
「社会人。この前まで学生だった人。米ちゃんと同じ〇〇大学で、なんかこの新卒で県内の会社に入ったけど、三か月で辞めちゃったんだって。めちゃくちゃかわいくて、母性本能くすぐられるやつ」
そう言いながら私は照れてしまって、それを隠すことに気を取られつつ、手元のスマートフォンで彼の写真を探す。