……いい作品が書けるわけがない。缶やゴミが積まれたちゃぶ台を眺めながら、ベッドに横になった。

翌朝のこと。

「あのねぇ。君、今日から来なくていいよ」

「へ?」

バイト先の店長から、クビの宣告があった。

出勤して早々、出会いがしらの一言であった。

「じゃ、そういうことだから」

「いやいや、そんなの言ってなかったじゃないですか」

「前々から言ってたよ。もう決まったことだから」

店長がパソコンに顔を向ける。

「これは俺の見解だけどね……君、この仕事に向いてないよ」

店長にはそれだけ言われて、事務室を追い出されてしまった。

「えぇ……」

河川敷に通りかかった時、聞きなじみのある声がした。

「先輩の声……」

歌に乗ったその声は、僕を知らず知らずのうちに発生源へと向かわせた。

「ん? あぁ、お疲れさま」

僕は、先輩の声にワンテンポ遅れて返事した。

「ごめんね、変なの聞かせちゃって……って、おぉい? どうした?」

先輩は少し恥ずかし気な顔をするも、すぐに僕の異変に気が付いた。僕の頬には、うっすらと滴るものがあった。僕にはそれが何であるか、見当がつかなかった。だが、僕はいてもたってもいられなくなり、こみ上げてくる『書きたい』という欲望を一つたりとも逃すまいと、持っていた手帳に筆を走らせた。