私が見ていたその日も、運転手の助手が降りてきて、車体の後ろにある釜に木を入れて火を起こしていた。すると、車はまた動き出し黒煙を出し走り去って行った。
当時の私は車の詳しい仕組みは知らなかった。しかし、車とはなんとすごいんだろう。人の操作で自由自在にどこへでも行ける。いつか自分も運転席に座って車を動かしてみたい。私は車に夢中で、いくら見ていても飽きることはなかった。
走っている姿をただ見ているだけではおさまらず、自分でも車を作ってみた。材料は拾い集めてきた木の切れ端だ。
小さなおもちゃの車を自分で作り田んぼのあぜ道で走らせて遊んでいると、時間が経つのを忘れてしまうほど楽しかった。
また身近な材料を使って何かを作ることも好きだった。小学生の時に作ったのが、小さな水力発電機だ。家にあった一メートルくらいの糸巻取り器のまわりに空き缶を取り付け、池の水が上から落ちてくる場所に設置した。
すると水の力で水車のようにクルクル回る。そこに自転車の小さな発電機をつけて、缶に水が入って糸巻取り器が回ると、豆電球がつく仕組みだ。
家庭訪問にきた担任の中山先生がこの小さな発電機を見て、非常に驚いていたのを覚えている。中山先生とは、大人になってからも手紙のやり取りが続いた。