施主が解体作業を担うなど、予想だにしない展開に、周囲が驚くのも当然だろう。(まあ、そこそこで音を上げて打ち切るだろう)、と言った予想に大きく反して、バールやら、チェーンソーやら玄人道具を揃えて、自らの肉体をブルドーザーのようにあやつり解体を進めていく我々の報告を聞いて、逆に不安にかられた設計士が、セルフ解体の様子を見に来たほどであった。

 
 
 
 

彼は解体作業を行う我々の姿を見て、「まるで、開拓者ですね」と。

そして、「梶井さん、これとこれは、潰さないでくださいよ、お願いしますよ」と、主要な柱にはテープを巻き付けて設計士に真剣な眼差しでお願いされてしまう始末であった……。

(彼の目には、私の姿が「破壊者」にでも見えたのかもしれない)

なお、切り倒した柱は、今、我が家の薪ストーブの燃料となっている。これもセルフ解体のおかげだろう。本来は廃棄され処分費用が請求されたはずの「廃材」が、薪ストーブの燃料となり、我が家を温めてくれている。

このセルフ解体によって、工事着工を待つわずか二ヶ月間でウクライナ情勢による資材費用増加分の100万円ほどを圧縮できたのであるから、セルフ解体は大成功の大満足をもたらしたのであった。(加えて肉体労働のお陰で10キロほど痩せたのは嬉しいおまけ)

なにより、私自身が調子づいてしまった。 薬科大学の大学院出の製薬会社の研究者だった男が、定年後齢60を過ぎて、解体作業をやり遂げるとは!

できるもんなんだな、なんでも、やれば!

もっと、できるんじゃないか?

 

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