夕方になると、ルリエはやっぱりホタルのことが気になって、ポチを連れて谷川へ行ってみた。岩陰に身を隠して、昨日より十五分ほど長く待ったが、ホタルは一向に出てこない。ホタルを見るのを楽しみにしていたので、ルリエはがっかりしてしまった。
「おじいちゃん、今年、アルプスは雪が少なかったの?」
「雪だって!」
仙吉は、少し面食らったような顔をする。
「まあ、多いというほどでもないが、少なくもなかったぞ。この辺りでも一メートルは積もって、雪かきがえらかったからな。雪がどうかしたのか?」
「うん、だって、谷川の水が去年来たときの半分ぐらいしか流れていないんだもの。ホタルだって全然いないのよ。だから、アルプスの雪が少なかったのかなと思ったの」
「谷川の水が半分か……」
仙吉は独り言のようにつぶやくと、口を噤んでしまった。
「確かに、昔に比べるとホタルが少なくなったね。でも去年は、ルリエが東京へ帰ったお盆すぎにたんと出たから、もうちょっと待ってみなさい」
美千代がスイカを切ってくれる。
「そうね。おじいちゃんのスイカは、いつもどおり甘くておいしいから、ホタルもそのうちきっと出てくるよね」
美千代に言われて、ルリエも元気が出てきた。
夕食のあと、庭で花火をやった。ポチもミーコも嬉しそうに見ている。仙吉は、ちょっと疲れたと言って先に寝てしまった。