車が、ヒルズボロの町はずれにさしかかった時だった。
「大利家戸さん、右側」
叫び声とともに車が左へ飛んだ。銃声が響き、右側のサイドミラーが粉々に砕け散った。けれども、追い抜きざまに撃ち込まれた割には、被害は少なかった。車線変更して次の攻撃に備えた清一たちだったが、少しでも気づくのが遅れていれば、命さえ危ういところだった。
次の攻撃がないのを確認すると、二人はスージーたちが待っているレストランへ急いだ。西部劇に出てくるような高床式建物のインバイエホールは、襲われたばかりなので、警察の目が厳しくなっているだろうと思われた。
「走行中に銃撃されたの」
若手刑事の説明を聞いたスージーが、顔を強(こわ)ばらせて言った。説明を聞いていると、襲撃グループのターゲットは脱出した二人のうちのいずれかだろうが、どちらかというと、清一の可能性が高かった。しかし、スージーはこの場で清一がターゲットではないかと発言することを控えた。
「僕たちが逃げ出したのが、癪に障ったんですかね」
若手刑事が、清一に視線を移して言った。客人に怪我が無かったので、ほっとした顔になっていた。
警察官の姿が店内から見えなくなると、四人は元のテーブルに移動して意見交換を再開した。けれども、十分ほど経過しても新しい意見が出ることはなかった。
「それじゃ、大利家戸さんの意見を取り入れ、殺害も排除せずに捜査するということにしましょう」
と、スージーが提案した。集まった四人が連絡を密に取り合っていれば、いずれ各部署の捜査が進んで、解決へ前進できると思ってのことだった。