【前回の記事を読む】分隊は百三十人いたが、そのほとんどは...「かすかにしか残っていない生命の灯は、十メートル歩くごとに、物が落ちるような音を出して、地面に堕ちていった」
Ore Joe! 俺たちの青春
「これ、うちの爺さんじゃん!」と希恵は大きな声で叫んでいた。
「ヨシオ、これ一体どういうことなの」
「死んだ婆さんに聞くと、爺さんが一番信頼していた部下だったそうだ。この写真しか残っていなかったらしい」
ヨシオが言うと、希恵が、
「私、何かヨシオと縁を感じるんだよね」
そう言うから、
「冗談じゃねえ。お前となんか縁もゆかりもないわ」
と言ったら、
「ふざけるな、おめえ」
と言って希恵は帰っていった。
その日から、希恵の爺さんは家に訪ねてくるようになった。
本当は、ヨシオは希恵が好きだった。姉御肌で接してくる希恵には、なにかと母性を感じてしまう。
「何考えているの。ヨシオ、ご飯食べなさい」
そういうお袋の言葉でヨシオは我に返った。
「そういえば、あの爺さん。遺骨収集に行くと言っていたな」
親父は、団子汁を口に入れながら言った。
「行くとなれば、時間も、お金も大変だよね」
お袋が言った。
「この話は、何とか工面して行こうというところまでいって、そこから、話は進まなかった。とどのつまりは金がないってことだね」
そういうと、お袋はため息をついた。