千晴の質問は、何時にも況して“直裁(ストレート)”であった。マムシは、その問いには答えず、千晴の太刀を鞘に納め、自身の腰反りがやや強めの小太刀を持って越させ、百足の横(湧水地の崖)に生えている、太い孟宗を切って見せた。

千晴もそれに見習い、マムシが鞘に納めて立て掛けて置いた、自らの太刀を手に取り、その横の同じ太さの孟宗を切り、互いの竹の切れ口と、太刀の切っ先や刃先をまじまじと吟味していた。この様は、付き添いで来ていた荘園の司を威嚇するのには、十分な迫力があった。

高明は、自らの太刀でやや小振りの孟宗を切り、それを槍の様にして地面に突き立てた。

「忠賢、これを突いて見せよ」

百足が自らの汗を拭う為に肌けていた上半身に“気を取られ”ていた忠賢は、我を取り戻し、父の命に従って見せた。

竹筒に、切っ先が少し刺さったが、竹は、見事に地面から跳ね返り、百足の後方の方へ飛び、気配を感じた、百足は、上着を羽織りながら“素早く”振り返った。跳ね返った孟宗は、彼女の足元に転がっていた。

同じ事を千晴は、自身が切り落とした孟宗を使って、して見せたが、ものの見事に、切っ先が刺さった箇所から真っ二つに孟宗竹は割れた。

「忠賢、未だ未だ、鍛錬が足りぬ」

師は一言放って、太刀を鞘に納めた。しかし、しょげる忠賢の元に、マムシが近寄り

「若君、もし宜しければ、これをお使い為さりませ」

と囁き、自身の小太刀を手渡し、先程切った孟宗を地面に突き立てた。高明は、許諾の相
槌を打ったので、彼は迷わず、同じ事を繰り返した。そして孟宗は、見事に、真っ二つに割けた。

「高明様、千晴様、御所望になっていた事とは、この事では、御座いませぬか?」

マムシは、見透かした様に首を垂れつつ、二名の武辺の貴族に問うた。