【前回の記事を読む】千葉・柏に誕生した"オートバイ神社"とは? BDSグループが38年越しで築いた新名所の舞台裏

プロローグ

ベッドタウン柏にある十二万平方メートルの杜

BDSはここ柏以外にも大阪と福岡にもオークション会場を持ち、毎週四千台以上の二輪車をオークションに出品させ、そのうち落札比率は九割に及ぶ。日本国内のオークション経由で販売される中古二輪車のおよそ半分は、BDSでセリ落とされたものという計算になる。

セリに参加できるのは会員である全国の二輪車販売店でその数はおよそ五千社に及び、もちろん日本一の規模だ。彼らにとってはここが仕入れ場所ということになる。国内で販売される二輪車はもちろんのこと世界各地へ輸出されるものも少なくない。二輪車業界にこういう仕組みを作り上げた男こそ、中山武司なのだ。

中古二輪の総合サービス会社

中山武司が起業したのは三十五歳の時、今から四十年近く前のことだ。十年ほどのサラリーマン生活の間、いつか独立したいと心に描いていた。中山は創業の時からバイク・データ・サービスという社名を事業のコンセプトとして持ち続けてきたという。

「当社は二輪車の中古情報の提供を主たる業務としてきましたが、そのほかに中古二輪車を斡旋する物流サービス、会員店の販売支援をする企画サービスも行ってきました。

昭和五十八年の創業時から中古二輪車のビジネス情報誌を創刊、中古二輪車を査定する下取り標準査定表を業界に先駆けて制作しました。その後衛星通信の動画ニュース、インターネットが加わり媒体が多様化していきます。

物流サービスは会員の保有する在庫車のデータベースから始まり、それがオークションへと発展しました。また大型化から取り残された中小の二輪車販売店の支援サービスも様々な形で現在まで続けています」と中山は言う。

創業以来中山はこうした事業形態を自分でデッサンし、発展させてきた。ほかを見回してもこういう企業は見当たらない。

「私は第五の二輪車メーカーになろうと社内で言ってきました。二輪車業界にはホンダ、スズキ、ヤマハ、カワサキという四大メーカーがあります。それに続く五番目のメーカーともいうべき中古二輪車の総合サービス会社を目指すということです」

中古二輪車を扱う店は大小様々だ。

中には自転車を専門に扱う零細店が中古二輪車も扱っているというところも少なくない。そうした店では大手メーカーとの直接取引は難しい。中山はそんな零細店にも情報を提供し、オークションでの仕入れの門戸を開いた。