プロローグ
自分がこうなったのは環境が悪いからだ、と文句ばかり言う人がいる。
私は環境なんて信じない。
この世間で立派にやっている人間は自ら立ち上がって望むような環境を探したか、あるいは環境が見つからなければ、自分で作りだした人たちなのだ。
バーナード・ショー
神社建立
2021年(令和三年)八月十八日。千葉県柏市で神社建立の鎮座祭が挙行された。「柏の杜オートバイ神社」という。
「神社」といっても宗教的な目的は持たず、オートバイライダーの交通安全祈願やツーリングスポットとして地域の活性化を目指すものだ。
「柏の杜神社」という総称のもとに「オートバイ神社」、二輪販売店の商売繁盛を祈願する「モトム神社」、ゴルファーの健康を祈願した「ホールインワン神社」なども併設している。
神道扶桑教の宍野史生管長が斎主を務め、厳粛な雰囲気のもと鎮座祭が執り行われた。祀主である中山武司株式会社BDSホールディングス代表取締役は挨拶で次のように述べた。
「この度、私どもBDSグループは柏の杜神社を建立する運びとなり、本日の鎮座祭をもって神様にお越しいただく、つまり『魂が入る』ということになります。
我々日本人は悠久の昔から自然を敬い、畏れ、感謝しながら暮らしてきました。大自然の神々への感謝と祈りという形で我々の心の中に、知らぬまに神が宿っているのです。
それが全国各地で行われているお祭りであり、土地土地にある神社であり、祠や石碑なのです。オートバイライダーのツーリングの醍醐味は、なんといっても好きな二輪車にまたがり、颯爽と風を切って走ることに尽きます。
もしツーリングのゴールのそばに、あるいは道すがら地域に根差したランドマークがあるとすれば、絶景スポットやご当地グルメに加え、ツーリングがより魅力的なものになるのではないでしょうか。
私どもBDSグループは創業から三十八年を経過し、二輪車販売店様の総合サービス会社を標榜し、二輪車流通の末席を汚しております。今回の神社建立で、少しでも二輪車産業の発展にお役に立つことができれば、望外の喜びです」
悪天候続きで久しぶりに姿を見せた夏の太陽のもと、中山武司の表情はことのほか晴れやかに見えた。