ベッドタウン柏にある十二万平方メートルの杜

中山武司は一介のサラリーマンから起業し、「神社」まで建立した男である。彼が率いるのはBDSホールディングス。傘下に九つのグループ会社を持つ。

起業したのが三十五歳、総売上高およそ百五十億円の企業グループを築き上げた。とはいえ、BDSといわれて何をしている企業かすぐにわかる人はごくわずかだろう。

BDSとはバイク・データ・サービスの頭文字を取っている。ただ、これだけではまだ会社内容を把握しづらい。

BDSグループの中心事業は、業者向けに中古二輪車のオークションを主催することである。中古の商品だけにその履歴が購買に大きな影響を持つ。そのために二輪車の様々な情報を提供するというのが社名の由来である。

千葉県の北西部に位置する柏市は人口四十二万人、中心駅JR柏駅から乗り入れている地下鉄千代田線で大手町まで四十分、JRの快速電車で上野まで三十分という利便性からベッドタウンとして発展してきた。

また近年では「つくばエクスプレス」の「柏の葉キャンパス」駅周辺の開発も著しい。柏駅から首都圏を環状する国道16号を走ること十五分ほど、田畑と雑木林が目立ってくる。

この郊外の地に十二万三千平方メートル、東京ドームおよそ二・六個分の面積を持つのがBDSの基幹オークション会場「柏の杜」だ。あのオートバイ神社はこの敷地に隣接したところに建立された。

初めて訪れるとその広大な敷地に驚かされる。何しろオークション会場が入る中心建屋から見通せる雑木林はすべてBDSの敷地内ということになる。

「オークションに出品する二輪車はエンジンテストを行いますから以前から近隣の騒音問題と隣り合わせでした。民家と離れた広々とした環境を探し求めて2007年にこの柏の杜をオープンしました」と中山武司は語る。

オークション会場はおよそ一万平方メートル、同時に五百人が参加できる。三台ないしは四台ずつの二輪車が出品され、参加者は手元の端末機を使って落札する。

BDSでは2007年からインターネットでセリに参加できる仕組みを整えており、実際にここに来なくてもセリに参加できる仕組みで、これは新型コロナウイルスの感染拡大時に大いに威力を発揮した。

併設されている展示場はおよそ二万五千平方メートル、巨大なテント屋根は東京ドームを施工した竹中工務店が手掛けた。採光に優れた設計で、五千台ほどの二輪車が見やすく並べられる。

 

👉『こんなボクでも40年間経営できました』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】あの日の夜のことは、私だけの秘め事。奥さまは何も知らないはずだ…。あの日以来、ご主人も私と距離を置こうと意識しているし…

【注目記事】ある日今までで一番ひどく殴られ蹴られ家中髪の毛を持って引きずり回され、発作的にアレルギーの薬を一瓶全部飲んでしまい…