「歌舞伎には、その演し物で主役を務める役者が、周囲の配役を決める習いがある」そうである(長谷部浩『天才と名人』文春新書)。
芝雀さんはそれだけ信頼されている役者なのである。
歌舞伎座発行の「筋書」に、「花競木挽賑(はなくらべこびきのにぎわい)」という、当月出演者の発言集があるが、今月は当然、新雀右衛門への祝辞が載っている。
兄の大谷友右衛門は、「色気を身につけてもらえれば」と語っている。
吉右衛門は、「ちょっと控えすぎるくらいのところもありますが」
いずれも私が受けた素人感覚が、的外れでないことを言っていると思う。
しかしお父上である先代雀右衛門は、「女方は60を過ぎないと、」云々と語っていたそうであるから、まだまだこれからなのであろう。
五代目中村雀右衛門襲名披露公演開始の直前、尾上菊五郎の休演が発表された。胃潰瘍で静養中とのことであった。夜の「口上」は休み、昼の『鎌倉三代記』の三浦之助義村役は、尾上菊之助が代役を務めるという。私は残念に思ったが、菊之助の三浦之助義村も、魅力だと思った。それよりも「胃潰瘍」というのが気になった。勘三郎や三津五郎のこともあり、悪いことを考えた。
菊五郎は73歳、私と同じ午年のはずである。幸四郎が同年。金正日、胡錦濤、温家宝、小泉純一郎、小沢一 郎、これらが同年と思う。
ところが今日、三浦之助は菊五郎が演じた。花道からの、よろけながらの登場に迫力があった。潰瘍をクス リで押さえ込んだのだろうか。昨日12日から舞台に立ったようである。
来月は出番がなさそうだが、5月には「團菊祭」が控えている。そこで元気な姿を確認させてほしい。