【前回の記事を読む】「そんなんだから非モテなんだよ!」入学式で偶然の再会。しばらくむっとした顔で互いに睨み合い…

アガパンサス

翌日はクラスメイト同士の軽い自己紹介と、担任の柳田先生から学校行事や施設の簡単な説明があった。最近改修された校舎は真新しさ特有の淡白な雰囲気を漂わせていて、新生活への不安を余計に煽ってくるのか、周りのクラスメイトはみな緊張した面持ちでそわそわしているように見えた。

僕は昨日のことで高校生活の期待を膨らませていたが、それもすぐに音を立てて破裂した。

中学生時代での実績を知ってか、柳田先生は和也を学級委員長に推薦して(半ば強制的ではあったけど)、すぐに周りから注目を浴びた。

小花あかりはというと、あの底抜けの明るさに魅了された女生徒や、彼女の容姿に魅せられた男子生徒数人に囲まれ、既にクラスの人気者となっていた。

僕は……。すぐに友達は数人できて上々のスタートは切れたけれど、やはりなんだか満たされない。和也たちが羨ましいとかではなくて、何かが足りないような、自分だけの話。

そんなことに思いを馳せていると、いつの間にかクラス内の各委員会決めが行われていた。図書委員、飼育委員、風紀委員、文化委員、放送委員、新聞委員など、柳田先生がホワイトボードに各委員会の名称を書いている。

書いた順番にやりたい人を挙手制で募る。委員会はそれぞれ二名で構成される。クラスの人数は三十人ほどだ。十ある委員会の数を考慮して、委員会に所属しない生徒は十人ほど出るはず。我関せず。

それを貫き通せば、自分に注目を浴びる出来事は起き得ないと、僕は瞬時に判断した。嫌な注目を避けるための、最適な方法。いやらしい頭脳だ。

大方その予想通り、委員は淀みなく決まり、メンバー未決の委員会は残すところ後一つとなった。ちなみに小花あかりは、周りに唆され学級副委員長に選ばれていた。

しかしそこで事態は停滞を見る。最後に残った園芸委員だけ、立候補者の挙手が起きなかったからだ。

「おいおいみんな。園芸委員はこの学校の重要委員だぞ! 誰か立候補する人はいないのか?」

柳田先生が困惑した表情を湛えて教室を見やった。この問題に対する他力本願の視線が、クラス中を忙しなく行き交う。

この空気が不快だったことと、現時点でどの委員会にも所属していない自分に、白羽の矢が立つのも時間の問題だと思い、諦めて僕は立候補した。

「先生、俺やりますよ、園芸委員」

クラス中のざわめきが僕の体をチクチクと刺してくる。人と違うことをすると、こんな謎の罪悪感を感じるものだ。納得いかないけれど。

「おお! 矢崎ありがとう。では一人目は矢崎で、もう一人は誰かいないか?」

「先生! 俺がやりますよ! 園芸委員!」

和也が間髪入れずに名乗りを上げた。長年の付き合いだ。僕を気遣っていることは、その表情からすぐにわかった。

「皆木。君は学級委員長だろ? さすがに掛け持ちは大変だからダメだ」