西海の後ろについて歩き始めると、教室から色めき立った声が聞こえてきた。一体なんだろうと視線だけで周囲を確認すると、女子たちが私と西海を見て楽しそうにひそひそ話している。

断片的に聞こえてきた単語をつなぎ合わせて推測すると、どうやら恋愛脳の女子たちが告白のための呼び出しと勘違いしているらしい。確かに状況だけ見ればそう見えないこともない。

しかし当人同士はそれが事実でないと知っている。というか人目を集めるつもりがなかったら、手紙で呼び出せばよかったじゃないか。

そしたら私だって呼び出しをちゃんとすっぽかしたし、西海を警戒して避けることだってできたのに。

西海の後ろについて中庭までやってきた。呼び出しや告白の場所としては校舎裏が定番なのかもしれないが、うちの学校は校舎裏がそこそこ通行量の多い道路に面しているうえに、金網フェンスなので機密性が著しく欠如している。

だから大体の人は校舎の窓から死角になる中庭の一角かグラウンドの倉庫裏を利用するらしい。自分には縁のない場所だと思っていたのに、まさか利用することになるなんて。

「単刀直入に聞く。東堂一彦についてどう思う?」

目の前の西海の表情は険しい。怖いとまでは思わないけど気まずい空気だ。でも質問の意味がわからない。なんで東堂? 私、東堂とは話すどころかクラスが一緒になったこともないんだけど。

「イケメンだと思う」

「そうだな」

で、無言。鋭い目つきが何かを訴えるように圧をかけてくる。肯定はしているが、どうやら求めていた返答ではないらしい。西海に対して負い目を感じている私は仕方なく会話を続ける。

「身長が高くて憧れる」

「ああ」

「運動神経が良くて羨ましい」