【前回記事を読む】「東堂一彦についてどう思う?」急にクラスに来たかと思えば意味の分からない質問に混乱。かみ合わない会話に違和感を感じ…

#1

確か春休みのあのとき、私が指差した南さんの隣には東堂がいた。私はまっすぐ南さんを指差したつもりでいたけど、校舎の窓からグラウンドを示した程度では指の先にいるのがどちらかなんて正確にわかるわけがない。

だから西海は、直前まで見つめていた東堂を私が指差したと思ったのだろう。そして大っぴらにできない恋心を見抜かれたと勘違いした。だからこうして墓穴を掘ったのか。納得。

どうやら西海も同じ結論に至ったらしく、ゆっくりとした動作で頭を抱えてため息を吐き出している。

きっと春休みの間どうするべきか悩んでいたのだろう。あの日、びっくりするくらい自然な動作で立ち去っていったけど、今の西海の様子を見る限り内心は穏やかじゃなかったに違いない。

あの場所で一言でも言い返してくれたら、そんな誤解を抱えたまま春休みを過ごすことはなかっただろうに。

「北田。口は堅い方か?」

「豆腐よりは」

「映画なんかで頭を殴って記憶を消すとかよくあるけど、実際どうだと思う?」

「捕まると思う。やめておいたほうがいいよ」

なるほど。西海は私の記憶を消してなかったことにしたい程度には秘密にしているらしい。知りたくなかったけど知ってしまった。だって西海が勝手にしゃべるんだもの。

「結局、西海は何しに来たの」

「……北田が言いふらしたりしないように口止めに」

「うわ、見事に自爆したね。いまさら口止め? 遅くない?」

「うるさい」