【前回記事を読む】【オタクの黒歴史】「何か用?」学校の廊下で窓の外を見ていた同級生。急に話しかけられてパニックになり、ある質問をしたら…。【小説】

#1

クラスが一緒でも話す機会がなかったから、クラスが別になれば会う機会もないだろうと踏んでいたのに。

一度の大失敗で発生した負債を踏み倒そうと目論んでいたのに。まさか向こうから謝罪の取り立てに来るなんて。

配慮が欠けていた自覚はあるけれど、きっとなんかのハラスメントに抵触したかもしれないけど。

でも春休みが明けてクラスも分かれたのにわざわざ摘発しに来なくてもいいじゃないか。任意同行でも家宅捜索でも令状を持ってこないと私は絶対に応じないぞ。

もろもろの愚痴に近い思考が脳内を駆け巡る中、そんなことはおくびにも出さずに入口まで歩いていく。

「西海だよね、何か用?」

先攻の一手をもぎ取り、少し困ったような笑顔を作りながら、あくまで今日初めて話したという体(てい)で話し始める。

内心は少し困るどころではない、ハチャメチャに困っている。迷惑以外の何物でもない。お引き取り願いたい。

そこで西海は私の後ろ、クラスメイトたちからの視線が集まっていることにようやく気づいた。

「場所を変えよう。こんなに人目を集めて話すような内容じゃない」

人目を集めておきながらよく言ったものだ。とはいえ私としてもこんな衆人環視の中で自分の無神経ぶりを糾弾されたくはないので黙って頷いておく。

公開処刑なんて勘弁してほしい。卒業までの一年間、クラスでの居心地が悪くなってしまう。