「口止めしなくたって大丈夫だって。口を滑らせることはあるかもしれないけど、進んで言いふらしたりはしないから。信じて」
「口を滑らせて他人の秘密を暴くようなやつは信用できない」
「別に信用されたいとも思ってないけど。でも学年の大半は私より西海の言うことを信じると思うから、信用はできなくても心配はしなくていいと思う。普通に違うって否定すればいいじゃん」
成績上位者で教師からの信頼も厚い品行方正な西海と、留年スレスレの成績で学校行事に対しても全般的に消極的な私では、比べるまでもなく西海のほうが人格者に見えることだろう。
他人がどちらを信じるかなんて火を見るよりも明らかだ。日頃の行いの差である。まあ、西海からすれば周りが信じるかどうかの前に、そんな噂が広まる可能性があることがすでに嫌なのかもしれないが。そんなのは私の知ったことではない。
納得できていない様子の西海はいったん置いておくとして。西海が私のデリカシーのなさを糾弾しに来たわけではないのなら、変に引け目を感じる必要はない。罪があっても相手が裁かないのであれば無罪である。立場としては対等だ。
それよりも私は、もっと身近で重大な問題のほうが気がかりになっている。
「そんなことより、この状況どうしてくれんの。西海、頭良いんだから何かいい方法考えてよ」
「この状況? なんのことだ」
意味がわからないとでも言いたそうな西海に、私は聞こえよがしにため息を吐き出した。
「多分クラスのみんな、西海が告白するために私を呼び出したと思ってるよ」
西海が心底驚いたような顔をする。こいつ、本気で気づいていなかったのか。あんなに視線を集めておいて。