【前回記事を読む】初デートでいきなりダブルデート!? ひょんなことから付き合うこととなった「彼氏」の目的は、同級生カップルの…
#2
東堂一彦と南百華の交際において、西海十李の許可を必要とする要素が一つも思いつかないんだけど。
「仮に一彦の彼女が北田だったら、俺は受け入れがたい現実を拒絶するために北田を背中から切り捨てていただろうが」
聞き捨てならない。
「南は一彦の隣に並んでも遜色ない数少ない人間だ。容姿、成績、性格、人望。どれをとっても一彦の彼女に相応(ふさわ)しい。それどころか一彦の隣にいることによって、より一層魅力を引き出しているといっても過言ではないだろう。
あの二人ならこれから先、卒業後もうまくやっていけるはずだ。そういった相手は人生において貴重な存在だ」
お前は一体どこから目線だ。
娘を嫁に出す父親か。あるいは嫁を品定めする姑か。
ドン引きしている私を気にせず西海は、何より、と言葉を続ける。
「一彦は南のことを好きで、南も同じくらい一彦のことを好きでいる。俺じゃ何十年経っても、あいつをあんなふうに笑わせることはできないんだろうな」
あんなふうに、と言っている西海の視線は、窓の外ではなく教科書の上を滑っている。それでも何となくわかってしまった。きっと頭の中には幸せそうに笑っている東堂の顔があるのだと。
「俺の考える一彦の幸せな未来では、隣にいるのは俺じゃなくて南だ。それでもいいと思ってるし、それが最善だとも思ってる。一彦の隣には南がいるべきだ。だから南が彼女でいるのは許せる。これで回答になってるか?」
「……納得はした」
押しつけがましい幸せだな、とは思ったけど口には出さなかった。それくらいは西海もわかっていそうだったから。
きっと西海が我慢しようがしまいが、東堂は勝手に幸せになると思う。東堂とまともに話したのは一回だけなので知ったような口はききたくないけど、私から見た東堂一彦は漫画の主人公のようなやつだった。
だからきっと人並みに苦労や苦難を受けて、乗り越えて、勝手に幸せになれるだろう。西海が気を遣わなくたって、結果は変わらないに違いない。
だから西海の献身は最終的に無意味になると思う。影も形もなくなって、西海の心に傷だけを残して消えるんだろう。
「そんなことはともかく、お前に一つ頼みたいことがある」
「何?」
西海に同情に近い感情を抱いたところに頼み事をなんてしてくるものだから、まあ、ちょっとくらいなら聞いてやろうかなって気持ちになってしまった。自己犠牲の塊みたいなスタンスでいるやつに、与えてばかりいるようなやつに、ちょっとくらいご褒美が与えられてもいいんじゃないかって思ってしまったのだ。