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「ただいまぁ、あぁ暑かった。我が家は全館空調やから玄関入ったら涼しいわぁ、幸せ」と言いながら、ランドセルを背負い小学校から帰った私は料理店の台所に入っていった。
食卓をはさんで叔父シンと祖母キヨが座って浮かぬ顔で話をしているところだった。私が入ってきたので難しい話は中断されてしまったようだ。
「あぁルリ子、お帰り」と言ったキヨは肩を落として元気のない様子だ。シンも眉を吊り上げて怖い顔をしている。小学生の私にも2人が面白くない話をしていたのはすぐに分かった。そこへ姉サエが帰ってきた。
「なぁルリ子、テレビゲーム機で遊ぼぉ」と、サエは正月のお年玉を2人で出し合って買ったテレビゲーム機を出してきて台所の小さなテレビにセットした。そしてシンとキヨには構わずサエと私はゲームを始めた。
そのすぐ後にイライラしていたシンが私たちのゲーム機本体を鷲掴みに取り上げ、一気に力任せに床に叩きつけた。グワンッと鈍い音がしてゲーム機の角が割れてしまった。まだ買ったばかりの新品のゲーム機が壊れたのだ。
「ちょっとぉ、何するのや」と、私は椅子から立ち上がり壊れたゲーム機を見て愕然とした。
「あぁやばい、壊れたのとちがうかぁ」とサエは半泣きの顔をしている。
「もぉシン叔父さん、何で私らのゲーム機を壊すんや……どうせ今日もパパと喧嘩したんやろぉ、叔父さんはパパが気に入らんのや。ほんでも鮮魚店はパパのお店やもん仕方がないやないか」と私はシンを睨みつけた。
「同じところで2人もおるからあかんのや。別々の場所で働いたらいいやないか、叔父さんがちがうところで働いたらええんやないか」と私は怒鳴った。