「ほんっとうにごめんね……」

「……あ゛ー、別に死ぬわけじゃねぇよ。だからそんな泣きそうな顔すんなって。メンタル弱すぎか」

「え? あ……泣きそうになってない!」

「いや、なってたろ、馬鹿」

「馬鹿じゃない」

「馬鹿」

「馬鹿じゃない」

「ばーか」

「馬鹿じゃなぁい!」

「はは、なんだよ『馬鹿じゃなぁい!』って」

「うるさい! もう!」ティーナは頬を膨らませて手を振り回している。笑って流せるような可愛い怒り方だ。

(怒り方がガキ……)

「本当にログは口が悪いね!」

「まぁ」

「『まぁ』じゃない! もう……じゃあ、そろそろ出発しよう」

「あぁ」

一週間分の水を持って、洞窟での短い休憩を終えて、夕方とは打って変わって肌寒くなった暗い外へ出発した。

「さむ……」

「そうか?」

「ログは寒さに強いんだね……」

月明かりが雲で遮断され、あたりはすっかり暗闇と化し、幽霊でも出てくるんじゃないかと考える。そんなことが起こるわけがないとわかっているけれど、それでもやっぱり怖い。一人だったら確実に目に涙を浮かべながら「さむいよぉ、くらいよぉ」なんて泣き言を言いながら進んでいたが、ログという人の存在があるから少し怖さも和らいでいる。でも震えるほどに怖い。

次回更新は7月6日(日)、12時の予定です。

 

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