【前回の記事を読む】中学を卒業して十年、ほぼの音信不通の友人から電話があった。「ちょっと会いたくなってね」と...
二
「タッキー、おまえ、今、ハッピー?」
ユーは昔のように、眼鏡に手を添えて、僕と会うなり、いきなりそんな言葉を言ってきた。
「ユー、おまえ、頭、狂ったのか? だいたいここはどんな会社なんだ? ワンフロア丸々借りているようだけど、社長ってどんなやつ?」
「なんだよ、タッキー、かっこよく会話しようと思ったのに。昔のママじゃないか。ここはさ、僕の会社」
「嘘つけ、よほど悪いことでもしない限り、無理でしょ」
「いやっ、本当なんだよ、ほらっ」
そう言って、六本木ヒルズの高層階の応接室で、ユーは、会社案内を僕に見せてくれた。
そこには、Y&Y Asia ltd.という社名と業務内容が書かれていたが、よく見ると社長挨拶のところに川村祐二とあり、ユーの今の顔写真が載っていた。続いて名刺をもらったが、確かに代表取締役と書いてある。
僕は、それを食い入るように見つめて、目の前のユーと交互に見比べた。
「ほんとうだ。……宝くじか?」
「もう、いやんなっちゃうな、僕の実力、自分の力で会社つくったんだって」
そう言って、ユーは、代表取締役の名刺を指さした。
僕は、しばらく言葉が出なかった。大学を出て三年そこそこ。僕の周りで会社をつくったやつさえもいないのに、ましてやそんな年月で、六本木ヒルズなんかで社長やってるやつなんていようはずもなかった。
「信じられない……。どうなってんだ」
「ゲームソフトだよ、ゲーム。ストーリーのあるゲームを、いろいろな仕掛けをしてユーザーの判断次第で違うストーリーにもなるソフトを開発したんだ。それを大手が買ってくれてさ、それで出来た金を株に投資して、また儲けたんだ。
そしたら、それも当たってさ、それを元手にさらに投資したら、それも当たって、気がついたら、十億近くのお金が貯まっちゃってさ……」