「十年ぶりに!」
僕は、頭がくらくらしてきて、もう一度、ソファに座って、ユーを見た。
「この会社のY&Yって、どういう意味だ?」
とりあえず何を話したらいいかも分からなくなってきたので、先ほどの会社案内をみながらユーに聞いた。
「表向きは、あなたとあなた、コミュニケーションを広げようという意味なんだ」
「なんか気持ち悪いな。裏の意味は?」
「Yuは僕の名前のYu、次のYuは顧客のYou。僕とお客さんという意味なんだ」
「なんか訳の分からない名前だな」
「そんなことないよ。いい名前だよ」
さすがに十億稼ぐやつの頭は分からないと僕は、思った。
「今、俺さ、広告代理店で働いて、それなりに充実してるんだ。俺とユーだって、十年会ってないんだぜ。もしかしたら、仕事し始めたら喧嘩になるかもしれないし、喧嘩したら、ユー、おまえは何も失うものはないが、俺は全部失う。そんなに気軽に誘うなよ」
「タッキー、相変わらずだね、ちっとも変わらない。でもタッキーらしくていいや。他の人にこの話をすると十人が十人、仕事の内容も聞かずに、僕の会社に入るっていうんだぜ」
「金、目当てだろ。そんな奴らは」
「そうなんだよ、そこだよ、そこ。だから信頼できる人が身近に欲しいんだ」
「まっ、考えとくわ。それより、久しぶりに飲みにでも行くか? 頭がくらくらしてきたよ」
「えっ、僕の会社、本当に興味ないの?」
本連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。