「勝手じゃない! 自己紹介もせずに帰らないでよ! それに、自分で言うのもどうかと思うけど、白い髪に角! めっちゃ少ない人間の中でもさらにレアな見た目のあーしに、なんの質問もしないでいく!?」
「あ゛ーっ! しつけーなー!!」
その人とはしばらく言い合いになって、落ち着いた時には一時間が経過していた。思い返してみると、とてもくだらない。あーだこーだ、泣きわめく赤ん坊みたいに騒いだ。とりあえず、『あんた』『お前』で呼び合うのはなんとなく嫌なので、自己紹介だけはしておこうと思った。
「とりあえず、あーしのほうから自己紹介。あーしの名前はティーナ、十三歳」
「……そっか」
そっけない発言に、またカチンときた。
「そっか。じゃないでしょ! 普通この流れだったら『俺の名前は……』って続いて自己紹介するもんでしょ!」
「……お前の旅の目的がわかるまで、言いたくない」
意味がわからないことを言う男の子に、ティーナはあからさまに不機嫌な声で聞き返す。旅の目的がわかるまでって、どういうことなんだ。
「はあ?」
男の子はティーナを睨(にら)みつけると、不機嫌そうに聞いた。
「お前、旅の目的はなんだ?」
「リベドルト……っていう所を目指してる」
リベドルト、その単語に反応したのか、男の子はティーナに目線を移した。ようやく興味持ってくれたか、と少しのため息をこぼす。
「……知ってんのか、お前も」
次回更新は6月26日(木)、12時の予定です。
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