「勝手じゃない! 自己紹介もせずに帰らないでよ! それに、自分で言うのもどうかと思うけど、白い髪に角! めっちゃ少ない人間の中でもさらにレアな見た目のあーしに、なんの質問もしないでいく!?」

「あ゛ーっ! しつけーなー!!」

その人とはしばらく言い合いになって、落ち着いた時には一時間が経過していた。思い返してみると、とてもくだらない。あーだこーだ、泣きわめく赤ん坊みたいに騒いだ。とりあえず、『あんた』『お前』で呼び合うのはなんとなく嫌なので、自己紹介だけはしておこうと思った。

「とりあえず、あーしのほうから自己紹介。あーしの名前はティーナ、十三歳」

「……そっか」

そっけない発言に、またカチンときた。

「そっか。じゃないでしょ! 普通この流れだったら『俺の名前は……』って続いて自己紹介するもんでしょ!」

「……お前の旅の目的がわかるまで、言いたくない」

意味がわからないことを言う男の子に、ティーナはあからさまに不機嫌な声で聞き返す。旅の目的がわかるまでって、どういうことなんだ。

「はあ?」

男の子はティーナを睨(にら)みつけると、不機嫌そうに聞いた。

「お前、旅の目的はなんだ?」

「リベドルト……っていう所を目指してる」

リベドルト、その単語に反応したのか、男の子はティーナに目線を移した。ようやく興味持ってくれたか、と少しのため息をこぼす。

「……知ってんのか、お前も」

次回更新は6月26日(木)、12時の予定です。

 

👉『テラスの旅路Ⅰ』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】妻の姉をソファーに連れて行き、そこにそっと横たえた。彼女は泣き続けながらも、それに抵抗することはなかった

【注目記事】滑落者を発見。「もう一人はダメだ。もうそろそろ死ぬ。置いていくしかない…お前一人引き上げるので精一杯だ。」