【前回記事を読む】彼女が遺した手紙は、まるで報告書だった。感情も何も含まれていない図鑑のような文。でも最後、たった一行だけメッセージが…

第二章 旅立ちと仲間

最初の出会い

旅に出てから一か月。初めの一週間こそは苦労したが、もうすっかり一人に慣れて、食料に困ることなく旅を進めていた……はずだった。

今は、おしゃれな煉瓦造りの建物が立ち並ぶ交差点で、一休みしていた。ここは他の所に比べたら随分原形が残っているほうで、所々に煉瓦の破片が落ちていて、道路の白線もうっすらと微妙に見える。建物の骨組みも残っている。

問題はそこじゃない。初めのころはまだ持ってきた食料があったからよかったんだ。でもここ最近ずっと、食料が魚しか取れていない。なかなか獲物になる動物が見つからないからだ。確かにここら辺は茂みも木も少なく、まだ町の面影を残しているため動物が住むのには向いていないのかもしれない。でもおかしくないか、この少なさは。今のところ鳥どころか蝶すら見かけない。

空腹状態で何キロも歩いて、ティーナは今、疲労の絶頂に立たされていた。

「はーあ」

どうせここで休んでいても獲物は見つからない、そう気づき、海よりも深いため息をつきながら立ち上がって、今にも鳴りそうな自身の腹を押さえながら進んでいった。

今思うと、ナギサは本当にすごかったんだなぁ。

すぐに肉を見つけて、洗濯も一人でできて、子供一人育てたんだ。こんな状況の世界で。

(ああいうのって慣れで身につくものなのかなぁ?)

ため息をつきながら食料になるものを探していると、マンションのような建物の中からなにかが出てくる気配がした。すぐに遮蔽物に隠れて、その気配の正体を探した。灰色の動く物体が目に留まり、よく目を凝らしてその物体の正体を探った。

建物から出てきたのは、狼だった。

「狼か……」