狼は基本的に群れで暮らす生き物で、単体で行動する時はたいてい獲物を探しに行っている時だ。狼たちはとても凶暴で、自分より弱いと認識した生物を見境なく襲う猛獣だ。だから、狼を見つけたらまず隠れなければならない。

すぐに隠れたのは正解だったな。あの時判断を間違えていたら今頃もう命はなかったかもしれない。その狼は濁った灰色の毛色をしていて、大きさはだいたい、自分よりも少し大きいぐらいだ。狼にしては小さい個体のほうだ。

(まぁけど、油断したら殺されちゃうんだよなぁ……ってかここら辺に動物全くいないのって、あの狼が食ってるからだよね? すっごい迷惑。まぁ、あの一頭だけ狙うほうが一番の安全策なんだけど……)

しかし、今現在のティーナは空腹状態。あの一頭の狼どころか、その狼の群れまでも全部食べてしまいたいほど腹が減っている。

(あの狼についていけば、もっとたくさんの狼が……)

そして気がつけば無意識のうちに、あとをつけて狼の群れを見つけていた。

その群れの狼の数は十頭ほどで、大きいものから小さいもの、子供までたくさんいたが、たった一頭、あきらかに他とは違う雰囲気を出している狼がいた。

(あのでっかい奴が群れのボスかな。あいつさえ仕留めちゃえば、残りは楽に終わりそうだ)

その狼は、五メートルはある巨大な体に、黄色く光る鋭い目、顔には古傷があった。いかにも、「強者」らしい見た目だ。その巨体から出るオーラのようなものは、威厳のようにも感じられた。

ライフルに弾を込めて、そのボスの狼を狙った。まさか自分が狙われているとも思わずに、少しも動いたりしないので狙いやすい。深呼吸を二回、スコープを覗いて敵の頭に照準を合わせ、引き金を引いた。

「ごめん」

ボスの狼に向かって銃を撃ち、あとはほかの狼たちに位置がばれないようにいったん逃げようと思った。

しかし、スコープから覗いた光景に目を見張り、逃げることができなかった。

「え……?」

そのボス狼には、傷一つついていなかった。

ティーナはライフルを下ろし、目を丸くする。