ズキン

「あれ?」

胸のあたりが、ズキンと痛んだ。チクリ、じゃない。痛い気がする、などでもない。本当に、痛い。もう痛覚もなにもないはずなのに。

きっと、なんでもない。そう自分に言い聞かせた。

「ティーナ、カエルを離して」

「え?」

「死にそう」

ティーナはナギサからカエルに目線を移した。カエルは、ティーナの握力で握りつぶされそうだ。

「げ、げろ……(シ、シヌ……)」

「あっ!」

ティーナは死にそうになっているカエルをすぐに離し、茂みへ帰した。カエルはぴょんぴょんと、逃げるように去っていった。

「けろけろ……」

「けろけろとはまた今度。そろそろ、お昼ご飯」

「ごはん!」

昼ご飯を作ろうと、ティーナを部屋に連れて帰ろうとしたが、ナギサはあることを思いつき、部屋の逆方向に足を向けた。

「……ティーナ、ちょっとお出かけ」

「おでけけ?」

次回更新は6月11日(水)、12時の予定です。

 

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