あれから、一年が過ぎた。本当に、「気がつけば」だった。最近時の流れが早すぎて怖くなってくる。年を取れば取るほど時間の流れが早く感じるというし、自分もロボットとしてはもう古くなっているのかもしれない。

ティーナの髪は伸びてきて、肩くらいまでの長さはあり、性別がどっちかくらいの見分けはつくようになってきた。段々と普通の人と同じようなものを食べられるようになって、歩いたり走ったりすることができていた。昼になってもずっと寝ているティーナを起こして、外に連れていこうと思った。

歩けるようになったし、適度な運動はさせたほうがいい。服を着替えさせて、マンションの庭へ連れていった。ティーナはいつもここで走り回って遊んでいる。

「けろけろ!」

「ん?」

ティーナはカエルを見つけて、「けろけろ」と呼んでいた。

え、もう喋れるの?

「ティーナ、これは?」

近くに生えていた花を摘んで、ティーナに見せた。すると、「おはな!」と言った。

「うそ、喋れるんだ……こんなに早く成長するものだっけ? 子供って……」

「だれ?」

ティーナはロボットに聞いた。

「私は、ナンバー……」

『「   」! 久しぶりに飲み行かね?』

とつぜん、ロボットの頭の中である言葉がフラッシュバックした。自分のものではない、軽快な男性の声。誰が言ったのかも、どこで言われたのかもわからないはずなのに、どこか、懐かしい。

あの人は、私の名前を呼んでいた。

私の、名前は——

「いや、私は……『ナギサ』」

「ナギサ!」

ナギサは、久しぶりに名前を呼ばれた。

もう忘れかけていた、自分の名前。

思い出させてくれた。

「ナギサ! おはな、あげる!」

「……ありがとう」

言葉がこれだけ話せるなんて、知らなかった。最近あまりティーナにかまってあげられなかったのが理由だろう。