誰もが知っている作家という存在はそういう対象としてわかりやすいのです。

さらに言えば、現代ではコロナ禍を経て「在宅ワーク」という新しいテーマ領域も、重要な「住まいの要素」化してきています。

考えてみると作家たちにとって、その住宅空間がそのまま「はたらく場」であることに気付くことができます。

今後わたしたちが「どういう空間ならば、住宅の中で想像力を活性化させられるか」「仕事とプライベートの充実をはかれるか」というテーマに向かっていくとき、作家たちの住空間はわかりやすい参考事例ということができるのでしょう。


わたしにはいまなお、全国のさまざまな「住空間」を見ることがライフワーク化してきています。

本書の刊行にあたり、過去に取材し書き留めた執筆記事を整理整頓し、それを深化させるよう増補も加えました。

さらにこの企画にあたって「新規取材」した作家とその住空間も紙数にして半数以上になりました。

自分自身の環境や立場が変わったいま、もうすこし自由な視点から住空間をとらえ住宅の新しいジャーナリズムとして、この興味分野を掘り下げたいと祈念しています。

九十九里の草庵「芥川荘」 芥川龍之介

【芥川龍之介が妻に恋文を書いた九十九里の庵】

 

〈出典:国立国会図書館「近代日本人の肖像」芥川龍之介 (https://www.ndl.go.jp/portrait/)〉

生没年:1892年(明治25年)3月1日 ~ 1927年(昭和2年)7月24日

出身地:東京都

職業・身分:小説家