認知症高齢者においても感情の構造には変わりはありませんが、感情表出にはいくつか特徴があります。
●抑制が効かない
認知症になると、前頭葉の抑制機能が働きにくくなり、基本的に我慢ができなくなります。デイサービスで自分の好みの職員が、他の利用者に優しく接しているのを見て、嫉妬にかられて不機嫌になり(このあたりまではかわいいのですが)、暴言、暴力を振るう方がおられます。
普通の社会人であれば、誰のことが好きなどとあからさまに表現することはないと思いますが、認知症になるとストレートに表現してしまうことがあります。
●言葉で表現するのが苦手
言語能力が低下していきますので、強い感情が湧いてきても、それを正確に言葉で表現できません。周囲がその感情をくみ取れれば問題ないですが、くみ取ってもらえないと共感欲求が満たされず、寂しい想いをしたり、怒ったりといったネガティブな感情につながっていきかねません。
●理由を忘れてしまう
激しく怒っている患者さんに理由を尋ねても、答えられることはあまりありません。実はなぜ腹が立ったかはすっかり忘れておられることが多くあるのです。
ですから、怒りをおさめようとして原因を解決しようとしても徒労に終わります。それよりは忘れる性質を利用して、話をそらしてしまうことが効果的なことがよくあります。
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