【前回の記事を読む】EQ理論で理解する非認知能力の正体と、認知症高齢者との関わりに役立つ感情のしくみと実践的な使い方とは?
第一章 認知症におけるEQ
普段気づいていない感情
私達はどうも自分の感情に対して鈍感なようです。
自分の感情を思い出してみようとした時、私自身もそうでしたが、多くの方はめちゃくちゃに怒った時や涙した時、大笑いした時など大きく感情が動いた時のことを思い浮かべようとします。
しかしそんなシーンは週に1、2度あればいいほうで、大きく感情を揺さぶられることなど実際はそれほど多くありません。
だからといって感情というものは、そのくらいの頻度でしか生じないものなのでしょうか? とんでもありません!
実は感情は生活の中でのべつまくなしに生じています。例えば、「この人嫌いだな」とか「少し寂しいな」とか、ユーチューブを見て「この映像にはびっくりした」とか、五感から刺激が入るたびに私達の感情は少しずつ揺れています。それらを意識していないだけです。
また心のどこかで感情を大きく揺さぶってほしいとも思っていて、音楽のライブに行きたいとか、この俳優さんの舞台を見に行きたいと思ったり、感動できると話題の本を探して読んだりします。
それほど大がかりでなくても、なんとなくすっきりしたくてゲームをしたり、鼻歌を口ずさんだり、友達とおしゃべりするわけです。このように私達の生活は感情と切っても切り離せない関係にあります。
しかし、この項の最初で触れたように、今どんな感情を感じたかを確認しながら生活している人はほとんどいません。思い出そうとしてもほとんど思い出せないのです。さっき何をしたかは思い出せても、何を感じていたかはなかなか思い出せないというわけです。
では、この感情という心の作用は取るに足らないものだからという理由で、このように意識されていないのでしょうか? そうではありません。