何しろ拓也は、マーベルやジャスティス・リーグ大好き、リアル戦争アイテム好きのオタクなんで、それはそれでわからなくもないけど、彼女が岸田拓也の何が気に入ったのか、何が好きなのか全くもって理解不明で。僕は、拓也本人には「人類の謎だ」って言ってやった。
「お前、彼女いないくせに、言うな」と僕は反撃を喰らった。続け様に、「好きな子とかいないのかよ」と言われて、僕は、工藤瀬菜さんのことや家での女子会のことを、酔った勢いで、ついつい喋ってしまった。内心しまったと思ったけれど、後の祭りで、拓也はそういうことを聞くと、ここぞとばかり、俄然と攻めてくるんだ。
「俺も新年会の仲間に加えろ。お前一人、ハーレム状態は許されん」
「無理、無理、そもそも女子同士の会だし、第一、姉貴がうるさい」
「じゃ、お前の姉貴を先に紹介しろよ、かなりの美人じゃん」
以前、拓也を家に呼んだ時、姉貴と遭遇したことが1回だけあった。その時は、もじもじしていたくせに。それより、だいたい、拓也にはキュートな彼女がいる。
「お前さ、信じられない。彼女いるだろが、かわいそすぎ」
「結婚とか考えると別だな、あー、お前のネイサンと結婚したい」
僕の姉貴以前に、それって、マジかよって思った。君もそうだろ。信じられない。
「お前さ、最低。ひどい奴、全く理解できない」
「彼女だって俺との結婚なんて、イメージしてないに違いないし」
「本当かよ? なんかお前と喋ってると、人類の風上にも置けないような気がしてきた。だいたい、お前が俺の兄貴になるのかよ、気色悪」
「俺だってお前が弟じゃ苦労しそうだけど、俺は我慢できるぜ」
「ヤメテー、お願いだから」
「ところで、その、セナ何某とかが好きなのかよ」
「うん、まあ、その話はいいよ」
僕は、話をはぐらかそうとしたけど、動物的直感で拓也は食いついてきた。というより、僕の苦悩を嗅ぎつけてきた。