やはりチェックインした部屋と違う、かなり広くてゴージャスな、明らかにスイートルームだ。だが、今朝チェックインした時のスーツケースがエントランスにある。

そのまま、大きなソファに二人腰掛ける。大きなガラス窓の外には横浜の夜景が広がっている。

「チェックインした部屋と違う」

窓越しに夜景を眺めていた玲蓮が、長い髪をかき上げながら振り向いて里見に言った。

「そお、でもいいじゃない。で、話の続きよ」

「何だっけ。もう疲れた」

玲蓮のリードに不信感を覚えながらも、里見は高揚していた。初対面の女性とホテルの部屋で二人きりになることなど、過去に一度もない。

「ねえ、特別なスープを再現して欲しいの」

「最高の料理とか言っているスープ?」

「そう。ねえ、味わってみたい?」

「君を?」

里見は冗談で言ったつもりだが、突然、玲蓮が唇を重ねてきた。重なる肌の温もりとパフュームの香りが里見の理性の安全装置を一瞬で解除する。

「お願いがあるの」

体をすり寄せ、玲蓮が懇願してきた。

「助けてほしいの、お願い」

「うん、だけど、何を?」

「最高はここにないの。明日説明する。約束よ。その代わり今日は……」

もう一度、玲蓮が里見にかぶさってゆく。