【前回の記事を読む】「ねえ、最高の料理って、どんなものだと思う?」彼女の質問に答えてみるものの、彼女は満足してくれず……
第3話 最高のスープ
里見は玲蓮の意図を全く読めないことから、酔いながらも少し不安を感じていた。調理についての純粋な問いかけなのか、自分へのアプローチなのか。不謹慎ながら後者であることを心の底では期待していた。
「君の言う、その最高の料理を教えてくれよ、質問が自分ありき的に感じるから。本当は自分が知っている最高を、僕に言いたいんだろ」
「何言ってるか、わからない」
「ごめん、ちょっと酔いすぎた」
玲蓮は覗き込むように里見の目をじっと見た。
「じゃあ、そろそろホテルまで送りましょうか、先生!」
「一人で行けます、歩けます。近くでしょ、確かここから300mぐらいでしょ。だいたい社長に送らすなんてね」
「大丈夫、私が運転するわけじゃなくて、車を用意してあるから。それにお願いごとがあるの」
「お願い?」
「あ・と・で」
「え」
「勘違いしないでね。技術的なお願いごと、よ」玲蓮は意地悪そうに言う。
ホテルの車寄せに着くと、里見と玲蓮の二人を降ろして車は走り去った。大理石張りのフロントのスタッフは会釈するだけ。里見は玲蓮に引っ張られるように部屋に向かう。酩酊しながらも、里見は朝チェックインした階と違うような気がした。
「部屋が違う?」
「いいえ、ここよ」と玲蓮。