玲蓮は少しイラついたような顔を、里見にわざと見せる。
「あのね、うちの料理の評価を聞いているんじゃないの。過去に食べたもので最高は?」
「地元の浜通り豚骨ラーメンとか」
「そんな答えじゃつまんない」
玲蓮は笑みを浮かべながら、口を尖らせて人差し指を里見の面前に突き立てる。
「僕は、別にグルメじゃないし」
「じゃ、おたくの商品は? 執行役員里見開発部長さん、どんな味でも作り出せるんでしょ」
「うちの商品は料理じゃない。工業製品だよ」
「でも調味料でしょ。至高の旨味って、コマーシャルで言っているじゃない」
「旨味成分の大本はアミノ酸だよ、料理じゃない」
玲蓮はさらに体を寄せ、里見に迫った。里見は玲蓮の体温を感じた。
「じゃ、具体的に料理では」
「さっきいただいた佛跳牆(ぶっちょうしょう)(フォーティャオチァン)とかは、最高とか聞いてる、僕は生まれて初めて食べた」
「まあ、いいセンいってる」
次回更新は6月20日(金)、22時の予定です。
【イチオシ記事】「今日で最後にしましょ」不倫相手と別れた十か月後、二人目の子供が生まれた…。W不倫の夫婦の秘密にまみれた家族関係とは
【注目記事】流産を繰り返し、42歳、不妊治療の末ようやく授かった第二子。発達の異常はない。だが、直感で「この子は何か違う」と…