玲蓮は少しイラついたような顔を、里見にわざと見せる。

「あのね、うちの料理の評価を聞いているんじゃないの。過去に食べたもので最高は?」

「地元の浜通り豚骨ラーメンとか」

「そんな答えじゃつまんない」

玲蓮は笑みを浮かべながら、口を尖らせて人差し指を里見の面前に突き立てる。

「僕は、別にグルメじゃないし」

「じゃ、おたくの商品は? 執行役員里見開発部長さん、どんな味でも作り出せるんでしょ」

「うちの商品は料理じゃない。工業製品だよ」

「でも調味料でしょ。至高の旨味って、コマーシャルで言っているじゃない」

「旨味成分の大本はアミノ酸だよ、料理じゃない」

玲蓮はさらに体を寄せ、里見に迫った。里見は玲蓮の体温を感じた。

「じゃ、具体的に料理では」

「さっきいただいた佛跳牆(ぶっちょうしょう)(フォーティャオチァン)とかは、最高とか聞いてる、僕は生まれて初めて食べた」

「まあ、いいセンいってる」

次回更新は6月20日(金)、22時の予定です。

 

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