パ ン

やや脱線気味だが、脱線ついでにパンについて私見を述べさせていただこう。イギリスのパンは結果論として結構美味しい。

どんな結果論かというと、別に美味しいパンを作ろうと思っているのではなく、たまたま手近の材料を使って作ったら美味しかったのだろう。

日本人の好きな肌理(きめ)の細かい清潔で真っ白なパンなど、初めから眼中にはないのだ。硬くてごわごわしていて色も茶色っぽい。

だが噛めば噛むほど味が出てきて、ちょうど玄米や五分搗(づ)きのご飯と同じようなことが言えるだろう。

特にコッペパンの大型のようなパンに、イギリスハムとオニオンスライスを挟んで食すると本当にうまい。

だいたいパンに関しては日本のパンはガラパゴスパンだ。あんなふかふかして噛み応えがなく、真っ白で肌理の細かいパンのどこがいいのだろうか。

ソフトフランスパンなど愚の骨頂の権化だ。もちろん好みによるのだろう。

またイギリスビールもうまい。逆にロンドンで飲んだ日本のビールは刺激が強すぎてイマイチだった。

ただし日本の輸入雑貨店で購入したイギリスビールは、重たくてキレがなかった。ビールは気候に左右されるのだろう。ただしイギリス料理は気候が変われば味も変わるような、そんなヤワではない。

蛇足を一つ。日本製の食パン一袋、私の場合は六枚切りだが、九〇円前後の安いパンの方が一七〇円前後の高いパンより美味しいことを最近発見した。

それもトースターで焼いた後、三、四分放置するとしっとりふんわかになる。これがうまい。

 

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