秋になり、私が一階の布団で眠っていると、深夜午前二時を過ぎた丑寅(うしとら)の刻、毎晩天井ではガサガサと埃を払う音がしていた。(またか、天井には埃が溜まっているんだなぁ)
そうこうしていると、夜が明ける前の午前三時四十分頃、暗闇の中、「ドカッ」と二階から庭に飛び降りて、「サッサッサッ……」とどこかへ出かける音がする。
私は布団の中で(もしニアミスでネズミの姿なぞ見たら、失神してしまう。絶対に窓を開けて、ネズミが出かける姿を見るなんて出来ない)と思っていた。ネズミが家に住みついて引っ越す人の気持ちがよくわかる。私は毎晩毎朝、この大きなネズミにうなされていた。しかし面白いもので、ある日の夜の午後七時半頃、天井がシーーーーンとしていると、
「あれっ? ネズミ帰ってこないよ?」
「何かあったのかなぁ? 車にでも撥ねられたのかなぁ??」
などと帰ってこない事を心配したりもした。人間というのは習慣付くと、ネズミでも帰りを待つようになってしまうものかと思った。
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