すると数分後、

「ドカッ、ドカッ、ドドドドォ……」

「何~~~っ?」

と、三人で頭の上を見た。私はその時、ハッと気が付いた。

「もしや、ネズミが入ったんじゃない??」

そう、ただのネズミではない。ものすごく大きなネズミの音である。天井ではガリガリ削る音や、埃をガサガサ動かす音がして、ミシミシいい出した。

「いやぁ~~っ。恐ろしい~~」

と、娘が叫んだ。

昨年三月、東日本大震災があり、我が家も若干被害を受けた。木造モルタルリシン吹き付け、非耐火構造のため、二階の和室の床の間の壁にひびが入り、その下の一階トイレまで続いていた。毎夏のゲリラ豪雨もあって、庭の土も流されていたので、家の基礎の部分が弱っている事もあり、どこかの穴からネズミが入ってきたのであろう。

この日を境にこの大きなネズミは、毎晩我が家に帰ってくるようになった。何気に時間も決まっていた。

夜、外が暗くなった午後七時半頃、一階の和室の奥の方から、ドカッと入って帰ってくる。とても存在感があるネズミだ。その都度、「ひえ~~っ」と三人で騒いだ。

「どうしてウチを選んだのかなぁ?」

私達は長い棒を持ってきて、天井をズンズン押して脅かしたり、娘が猫の鳴き声を真似して、「ニャーッ、ニャーッ」と言ってみたりもした。ネズミは非常に頭が良く、耳が良く、鼻が利く。娘が猫の鳴き声をすると、今まで天井でドカドカと走っていたのに、ピタッと止まる。が、出ていきはしなかった。

私はホームセンターへ車を走らせ、ネズミ退治の商品を探しに行った。お店にはネズミ用コーナーがあり、ズラーッと商品が並んでいた。ネズミで困っている人が多いんだなあと知った。お値段もなかなか高く、一万円近くの出費になってしまった。

家に帰ってきてトイレやお風呂場の天井、二階の押し入れの上などネズミの通りそうな道に薬を置いた。外の床下には、ネズミが嫌いなハーブの香りのゼリーを置いた。ネズミ取りは購入しなかった。もし捕まった場合、姿を見る事になってしまうのが恐ろしいので。色々と努力はしてみたが、残念ながらネズミは捕まらなかった。