おふくろが大切にしていて、私の妹に「これはしっかりあなたが保管してください」と遺言した日記がある。

「昭和九(一九三四)年 欧州出張日記」。その年にリスボン(ポルトガル)で開催される国際無線逓信諮問委員会に参列した際の日記である。

 

その後継続して西廻りの船旅をして帰国している。鼎三が海外研修で世界一周をした際、そのころでは、入手し難い、珍しい品々をお土産に持ち帰ったそうだ。

祖母には宝石の土産もあった。それが終戦後の食糧難時代に家族を助けることになるとは、祖母は想像だにしなかったであろう。

タケノコ生活で気に入っていたキャッツアイは、二束三文で生活費に消えたそうである。

家族団らんの思い出

船乗りで家にいる時間が少なかったのであろう、家族といる時間を大切にした祖父。自分の好きな麻雀でその目的を叶えていたようである。

ところが麻雀に興味のないおふくろと祖母は一緒に遊ぶ、ただこれが、家族にとっては苦痛であったようである。

「お小遣いをあげるから、一緒に麻雀をやろう」と母は誘われたそうだ。おばあちゃんも、無理やり雀卓の前に座らされ、居眠りを始める始末。

おふくろは祖母が祖父に怒られている光景を覚えているそうだ。

 

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