そのあと、一通りヨシオは、お説教を受けた後、家族三人で夕食をとることにした。ヨシオは一人っ子だった。

ヨシオ達家族は、食事をする時しかコミュニケーションはなかった。お袋が作る料理の中で、ヨシオは、亡くなった婆ちゃんの定番の団子汁が好きだった。小麦粉を練った団子を、味噌のスープで煮込んだやつだった。

「さあ、食べろ、食べろ。ヨシオの大好物だからね」

お袋は、せかすように食べさせていた。とにかく、ヨシオの食べる姿を見るのが楽しくてしょうがない風だった。

親父も、おいしそうに食べていた。ひとしきり、食べながら、とりとめのない日常の話をしているとき、突然、みんなの話を折るように、親父が大きな声を出した。

「あの人は、うちの爺さんが世話をした部下だった。うちの爺さんは、あのインパールで亡くなったんだよな。その時の戦友だな」

親父は思い入れをいれたように、団子を箸つかむと、二つに切った。すこし、荒々しく切った。

「うちの爺さんは、連戦連勝で、中国戦線から、シンガポールと、インパールまでは分隊にほとんど戦死者を出さず進軍していたそうだ。あの人は中国戦線から、ずっと、一緒だったらしい」

ヨシオは、親父の険しい顔をみながら、興味があったので聞いた。

「あのインパール作戦は、牛と羊に荷物を載せて、進軍する。食べるものがなくなったら、その肉を食えという命令だ。まったく、食べる物がなくなったら、近くの農家から略奪をしろというものだったらしい。大本営というものが本部だったらしいが、食物等をおくらずに、何万人も戦地に送るっていうのは、考えられないな」

お袋がお茶を入れながら言った。

「でも、あのお爺さん、良く助かって帰ってきたと思うわ。戦争が終わって、何十年よ。よく、あのお爺さん、ここが分かったものよね」

「それは、ヨシオに聞いたほうが早いかな……」

ヨシオは、頷いていた。

あの爺さんの孫の希恵は、ヨシオと同じ高校の同じ美術クラブの部長だった。ヨシオに興味があるのか、よく、うちに遊びに来ていた。その時、仏壇の上にかけてある、爺さんたちの遺影を見て驚いたのが始まりだった。

 

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