【前回の記事を読む】「くっつきすぎじゃない?」愛が深まる密着ダンスに笑いが混じる微笑ましい夜。「疲れたけど、とても楽しかった」

第九章 通り魔に遭遇

私はおばあさんを抱いて落ち着くのを待っていた。

コンビニの店員さんに、「椅子を貸してください」と頼んで、おばあさんを座らせた。

少し落ち着いた。涼真さん、警察に色々話を聞かれている。

この男、通り魔でその前に四人襲っていた。おばあさんで五人目だったらしい。
それを聞いたら足が震え出した。

おばあさんの家族が迎えに来た。

「何と言っていいか分かりません。本当にありがとうございました」

お孫さんだ。

「いいえ、お気遣いなく」

「お名前をお聞かせください」

「いいえ、当たり前の事をしただけです」

「お名前だけでも」

「高山と申します」

「両親から改めて連絡いたします。今日はこれで失礼いたします。おばあちゃん、行こう」

おばあちゃんをおぶっていった。頼もしいな。おばあさんも少し、落ち着いて、家族に連れられて帰っていった。私達も警察に話を聞かれて、名前、住所、連絡先を伝えて帰った。

家に着いたら、余計に震え出した。バッグは証拠品らしく、警察が預かるそうだ。携帯も入っている。しょうがないな。

「涼真さん、怖かった!」と抱きついた。

「美樹、凄かったなぁ。おかげでおばあさんを助けられたね」

「うん、無意識に蹴っていた」

「無意識にできた事は冷静だったんだよ」

「涼真さんが助けてくれると思っていたからだと思う」

「でも美樹、二度とこんな危ない事はしないで欲しい」

本当に怖かった。

その日の夕方のニュースで通り魔事件が流れている。勇敢なご夫婦が通り魔の犯人を捕まえたと話している。今もドキドキしている。

週明け、月曜日、

「高山課長、社長がお呼びです」

「はぁ~? 何で?」

「課長、何か悪い事をしたんじゃないですか」

「バカな事を言わないでよ」

コンコン。

「高山です。入ります」

「入って」

「失礼します」

お客様がいらっしゃいました。