【前回の記事を読む】「世界で一番大切な人で愛しています」――美樹の両親への挨拶。涼真の真っすぐな言葉に父も母も笑顔になった
第六章 会社退職
月曜日、辞表を準備した。部長が、
「柳澤君、来て」
「その前に、お話があります」
「何だね?」
「三月いっぱいで、退職をします」
「ええっ? 何で?」
「恥ずかしいですが……け、結婚します」
「はぁ~? 結婚!」
フロアに響くぐらい大きな声で、皆が見ている。別の部署の部長も小走りで来た。
「何で!」
「何でって何ですか。私でも、男に興味がありますよ」
「受理するかは後で専務に相談するからな。……僕の話は、大阪支社に部長で栄転の話だった」
「残念ですが行けません」
「本当に、本当に結婚するのか? どんな人か? 幸せになれるのか? 男か?」
「何なんですか。普通の人ですよ。よろしくお願いいたします」
席に戻ったら、
「課長、辞めるのですか」
「そうよ」
「ええー、この部署どうなるのですか」
「君達で頑張るのよ。甘えるなよ。自分に厳しくね。さぁ、仕事、仕事」
「柳澤君、専務がお呼びだ」
「ええっ? 早っ!」