咳払いして「一目惚れされたの。逃げても、逃げても、どこかで会うの。不思議と」

二度目の咳払い。

「何と、最後は新しいアポ先で、挨拶して顔を上げたら彼だったの」

続けて、

「僕からは逃げられないよと言われたの。観念して素直に受け入れたの」

「それから、それから?」

部下、身を乗り出している。

「それからって、上手くいっているよ。幸せって言うのかな」

恥ずかしい。質問攻め。約一時間。

女子社員が「課長、デートはどんなところに行くんですか?」

皆、目を輝かせて返事を待っている。

「それは……買い物や食事に行くのよ」

「何だ、普通ですね。課長でも、デートの時はドキドキしますか」

「当たり前でしょう! 私を鉄仮面と思っていたの?」

皆大笑い。二時間余り、質問攻めで会を閉めた。疲れた~。木曜日、合同飲み会。又、質問攻めだろうなぁ。

そして当日、やはり質問攻めに遭う。

「柳澤も、女だったんだなぁ~」

「はぁ~ん、男と思っていたのですか、部長」

「いや、綺麗だから女と思ってはいたが、兄貴肌だったからなぁ~」

「何ですか、それ」

「年下らしいが、話は合うのか」

「私よりも物知りで、色んな事を教えてくれますので尊敬していますよ。幸せです」

「いいなぁ~、新鮮だなぁ」

「うふふ。羨ましいでしょう。部長」

「今は綺麗でいいが年取ったら大丈夫か?」

「それが心配で逃げていたんですが、彼の実家に挨拶に行って安心したんです。ご両親、兄夫婦、何と祖父夫婦も十歳年上女房でした。ご両親は今でもラブラブですよ。とても素敵だった」

「そうなんだ。良かったなぁ」

全員で喝采。嬉しい時間だった。おじさん達の質問は昭和感がいっぱいだった。優しい先輩方だ。

次回更新は6月3日(火)、21時の予定です。

 

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