【前回の記事を読む】明日、突き落としたと話そう。そう思うと、留置所に入って初めて肩の力が抜けた。――無罪の男子高校生が自白を決意し…

スクリーン ~永遠の序幕~

自白の決意

「有希から被害届が出ていたんですか?」警察官は怪訝(けげん)そうな顔をする。

「何を言っている。何度も話しているぞ。我々は事件翌日に逮捕状まで用意しているんだ」青くなっている俺に警察官が続けた。

「有希さんの弁護士から面会を求められている。これは署内で行うことではないので各自でやるように」

思考回路が停止しているというより、俺はまた逃避してしまいそうだ。有希に逮捕されるように仕向けられていた――放心状態のまま手続きを終え警察署を出た。

何の隔たりも拘束もない状態で見上げる空は綺麗で眩(まぶ)しい。しかし、求めていた輝きとはまるで違う。タイミングを見計らっていたかのようにスマホが鳴った。

普段見知らぬ番号から電話がくることなんてない。出るべきか躊躇(ちゅうちょ)しているうちに切れてしまった。

〈警察官の言っていた、有希の弁護士からの連絡だろう〉

電話に出なかった自分に情けなさを感じる。こんなことだから有希に嫌われたのかもしれない。自分に対する怒りに押されるように、俺は電話をかけ直した。

「はい。香原(こうはら)弁護士事務所です」

「あの……今こちらの番号から電話を頂いたのですが」

「お名前を伺ってもよろしいでしょうか」

「今岡蒼斗です」

「少々お待ちください」

想像通りの相手と規定通りの会話なのに息切れする。事件のことが一つ、また一つ進む。